祈りの海

祈りの海

とりあえず、読み終わったので、感想を。

ブレッグ・イーガン『祈りの海』

全 11 作品の SF 短編集

イーガン初体験なわけだが、どこか冷たく薄暗く、そして重い思想背景を持った話が多い と言うのが印象に残った。そういうのかなり好きですが。

始めに軽目の雰囲気のものを読ませて、後半に重いテーマをもって来たという感じ。全体的に医療・宇宙論・宗教・思想・性などを主にテーマに扱っているので、解説にもあるように大きく言えば アイデンティティ が問題になっている小説だと言える。スペースオペラのような大仰な仕掛けはなく、淡々と物語が綴られていく。各物語の核となる世界は、独特なもので、主に倫理観・宗教観・社会性・行動規範などは、確固としたものを作者は持っているように思われ、説得力がある。ただ、言い回しが難解な部分があるため、一部理解に苦しむところがあったが、これは私の理解力不足と受け取った方が良さそうだ。良かったのは、『貸金庫』、『ぼくになることを』、『放浪者の軌道』。『祈りの海』は、良かったけど…オチが、いまいちだったかも。とりあえず、全体的には高品質だったと思う。少なくとも、それぞれの世界観は、独特で良かった。

SF って何でもありに見えてそうじゃない。アリはアリなんだろうけど、人の心を打つ様な、もしくは、時代を経ても劣化しない様なそんな物語を作ろうと思うと、なかなか難しい。イーガンもそうだけど、評価の高い作家は、かなり頭がよいと感じる。想像したもの(しかも、独特)を文章として具現化できるからだ。

イーガンは、気に入ったので他にも本を買った。『宇宙消失』、『ディアスポラ』である。いつ読むかは未定。


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